編集部やっと薬剤師になれたのに、一年目からもうついていけない…。そんなふうに感じてしまう自分を、責めていませんか。
この記事では、薬剤師一年目のつらさについて解説します。
じつは、この「つらい・しんどい・ついていけない」は、多くの新人がぶつかる壁です。
つらさの多くは、性格や能力ではなく経験不足からくる一時的なものと考えられています。
| 一年目の壁 | つらさの主な原因 | 対処の方向 |
| 仕事についていけない | 知識と経験の不足 | メモとふり返りで小さく積む |
|---|---|---|
| ミスがこわい | 失敗できないプレッシャー | 仕組みで防ぎ、抱え込まない |
| 先輩と比べて落ち込む | 比較の相手をまちがえている | 過去の自分と比べる |
| 辞めたい気持ち | 心身の消耗・環境との相性 | 成長痛か環境かを見分ける |
筆者は、新人薬剤師の声や体験談を集めて取材してきました。
同じ悩みを乗り越えた人が、どこでつまずき、どうやって前へ進んだのか。
その道すじを、今つらいあなたのためにまとめました。
薬剤師一年目が「つらい・ついていけない」と感じるのは自然なこと
まず知ってほしいのは、そのつらさが特別ではないということです。
それぞれ、順番に見ていきましょう。
多くの新人が同じ壁にぶつかる
「つらいのは自分だけ」と感じるとき、その多くは思いこみです。
新人薬剤師の相談には、仕事を覚えられない、聞ける人がいない、といった声が繰り返し出てきます。
つまり、あなたがつまずいている場所は、多くの人が同じようにつまずいた共通の壁なのです。
そう感じるのは、あなただけではありません。同じ場所でつまずいた先輩が、今は当たり前に働いています。
「甘え」ではなく経験不足が原因
つらさの正体は、あなたの心の弱さではありません。
国家試験の知識と、現場でとっさに動く力は、別のスキルだからです。
足りないのは根性ではなく場数であり、これは時間が解決してくれます。
できないことが多いのは、あなたが薬剤師に向いていないからではなく、まだ経験を積んでいる途中だからです。
つらさのピークはいつ来るのか
つらさには、なんとなくの波があります。
入職して数か月は覚えることに追われ、半年前後で理想と現実のギャップに気づきやすくなります。
この落ちこみはリアリティショックと呼ばれ、まじめな人ほど強く感じやすいものです。
つらさは一直線に増え続けるものではありません。時期ごとの波を知れば、必要以上に落ちこまずにすみます。
【時期別】薬剤師一年目がしんどくなるタイミング
同じ一年目でも、しんどさの中身は時期で変わります。
自分が今どこにいるかを、確かめながら読んでみてください。
| 時期 | 起きやすいこと | 心のサイン |
| 入職〜3か月 | 覚える量に追われる | 頭がパンクしそう |
|---|---|---|
| 半年前後 | 理想と現実のギャップ | この仕事で良かったのか |
| 一年前後 | 慣れと将来への不安 | このままでいいのか |


入職〜3か月:覚えることが多すぎる時期
最初の数か月は、情報の洪水にのまれる時期です。
薬の場所、機械の使い方、処方の見方を、いっぺんに覚えなければならないからです。
できない自分にあせるかもしれませんが、この時期は覚える量そのものが多すぎるだけ。
今できないのは当然です。3か月で全部こなせる新人のほうが、めずらしいくらいです。
半年前後:理想とのギャップに気づく時期
半年ほど経つと、少し周りが見えてきます。
そのぶん、思い描いていた薬剤師像との差に気づき、気持ちが揺れやすくなります。
この揺れは、視野が広がったからこそ起きる成長の証でもあります。
比べる相手を同期ではなく、半年前の自分に変えてみてください。できるようになったことが、きっと見つかります。
一年前後:慣れと将来の不安が出る時期
一年が近づくと、日々の業務には少し慣れてきます。
すると今度は、給料やキャリアなど将来の不安に目が向きやすくなります。
この不安は、あなたが立ち止まって進む方向を選び直すための、大事なサインです。
慣れてきたころの不安は、次の一歩を考える合図です。あせって答えを出す必要はありません。
薬剤師一年目がつらい6つの壁【壁マップ】
「つらい」とひとことで言っても、その中身はいくつかに分けられます。
自分のつらさがどれに近いか、確かめながら読んでみてください。
| 6つの壁 | こんな気持ちになる |
| 知識が追いつかない | 質問されても即答できない |
|---|---|
| 仕事が遅い | 自分だけ手が止まる |
| 先輩と比較 | あの人みたいにできない |
| ミスへの恐怖 | また間違えたらと手が震える |
| プレッシャー | 失敗が許されず気が休まらない |
| 人間関係 | 忙しそうで質問できない |


知識が追いつかない
患者さんに質問されて、うまく答えられずに固まる。
ただ、現場で使う知識は膨大で、最初から全部そろっている人はいません。
その場で答えられなくても、あとで調べて次に活かすことができれば十分です。
「確認してお答えします」は逃げではありません。あいまいなまま答えないほうが、患者さんの安全を守れます。
仕事が遅い・要領がつかめない
自分だけ手が止まり、まわりに迷惑をかけている気がする。
けれど、速さは慣れがつくるものなので、今の遅さは実力そのものではありません。
まずは速さより、ひとつずつ正確に終えることを目標にしてみてください。
新人のうちは、速さより正確さが優先されます。速さは、正確にこなせるようになったあとから自然についてきます。
先輩と比べて落ち込む
てきぱき動く先輩を見て、自分の不器用さに落ちこむ。
でも、その先輩にも新人の時期があり、同じように手が止まっていたはずです。
比べる相手を先輩ではなく、昨日の自分に変えるだけで、心はずいぶん軽くなります。
数年目の先輩と、今のあなたを比べる必要はありません。スタート地点が違うだけです。
ミスへの恐怖
一度ミスをすると、また間違えるのではと手が震える。
経験の浅い時期にヒヤリとしやすいのは、薬局ヒヤリ・ハット事例収集事業でも多くの事例が共有されているほど、めずらしくないこととされています。
大切なのは、ミスをゼロにする気合ではなく、仕組みで防ぐという考え方です。
- 間違えやすい薬は、自分用のメモにまとめておく
- あやしいと感じたら、出す前に必ず確認する
- 起きたミスは、責める材料ではなく次への手がかりにする
絶対に失敗できないプレッシャー
命に関わる仕事だからこそ、気が休まらない。
この責任感は、あなたが仕事に誠実に向き合っている証でもあります。
ただ、張りつめ続けると心がすり減るため、意識して力を抜く時間も必要です。
緊張感は大切ですが、休むことも仕事のうちです。オフの日は、仕事を思い出さない時間を意識してつくりましょう。
聞ける人がいない・人間関係
忙しそうな先輩に、質問するタイミングがつかめない。
聞き方を少し工夫するだけでも、質問のハードルはぐっと下がります。
人間関係のつらさをもっと掘り下げたい方は、薬剤師の人間関係の悩みと対処法の記事もあわせて読んでみてください。
「一点だけ確認したいのですが」と前置きすると、相手も答えやすくなります。聞くことをためらう時間より、聞いて解決する時間のほうが、職場の役に立ちます。
「一年目で辞めるのは甘え?」への答え
辞めたいと考えるたびに、「甘えかもしれない」と自分を責めていませんか。
この問いに、順番に向き合っていきましょう。
新人がミスしやすいのは自然なこと
できないことが多い自分を、甘えだと感じてしまう。
その気持ちは、裏を返せば、まじめに向き合っている証拠です。
経験の浅いうちにつまずきやすいのは、能力ではなく経験の量の問題です。
つまずくのは、ちゃんと挑戦している証です。何もしなければ、ミスも悩みも生まれません。
続けるか辞めるか悩むのは健全なサイン
辞めたい気持ちがわいてくると、自分がダメな気がしてくる。
でも、続けるか辞めるかを真剣に悩むのは、自分の人生を大事にしている証です。
その悩みは、キャリアを選び直すための最初の一歩でもあります。
「辞めたい」と「続けたい」の間で揺れるのは、あなたが今の仕事に真剣だからです。どちらを選んでも、間違いではありません。
それでも無理はしすぎない
「甘えじゃない」という言葉は、無理を続ける理由にはなりません。
がんばり屋さんほど、限界を超えるまで走り続けてしまうからです。
心や体に不調が出ているときは、根性ではなく休むことを優先してください。
「甘えじゃない」は、我慢し続けてよいという意味ではありません。つらすぎるときは、離れる勇気も選択肢のひとつです。
今のつらさは「成長痛」か「環境の問題」か【セルフ診断】
同じ「つらい」でも、乗り越えるべきものと、離れたほうがよいものがあります。
自分のつらさがどちらに近いか、いっしょに確かめていきましょう。


成長痛タイプの特徴
成長痛タイプは、時間とともに和らいでいくつらさです。
仕事そのものは嫌いではなく、慣れれば良くなりそうだと感じられるのが特徴。
できることが少しずつ増えている実感があるなら、それは前に進んでいる証拠です。
休みの日に回復できて、また行こうと思えるなら成長痛タイプ寄りです。もう少し続けると、景色が変わる可能性があります。
環境の問題タイプの特徴
環境の問題タイプは、がんばっても改善しにくいつらさです。
教えてくれる人がいない、理不尽に怒られる、といった状況が続くケースが当てはまります。
この場合、つらさの原因はあなたではなく、職場の側にあることが多いものです。
休んでも回復せず、日曜の夜がとくにつらいなら要注意です。環境の問題は、我慢だけでは解決しにくい傾向があります。
見分けるチェックポイント
見分ける手がかりは、いくつかの質問で整理できます。
下の表で、自分に近いほうがどちらか、ゆっくり確かめてみてください。
| チェック項目 | 成長痛タイプ | 環境の問題タイプ |
| できることが増えているか | 増えている | 変わらない |
|---|---|---|
| 教えてくれる人がいるか | いる | いない |
| 休むと回復するか | 回復する | 戻らない |
| 仕事内容そのものは | 嫌いではない | もう考えたくない |
右側が多いと感じたら、環境を変える視点を持つことをおすすめします。
薬剤師一年目のつらさを乗り越える方法
つらさは、ちょっとした工夫で少しずつ軽くできます。
今日から試せるものから、取り入れてみてください。


メモとふり返りで不安を減らす
同じことを何度も聞いてしまい、自己嫌悪におちいる。
その繰り返しがつらいなら、自分だけのメモを育てるのがおすすめです。
メモは、あなたの成長を目に見える形にしてくれるお守りになります。
- その場でメモし、あとで清書する
- 間違えやすい薬は、色を分けて目立たせる
- 一日の終わりに、できたことも一行だけ書く
先輩への質問の仕方を変える
質問すると迷惑がられそうで、口を開けない。
「ここまで調べて、ここが分かりません」と伝えると、先輩も答えやすくなります。
丸投げではなく調べたうえで聞く形にすると、印象も大きく変わります。
「一点だけよろしいですか」と切り出すと、忙しい相手にも聞きやすくなります。質問は、仕事を前に進める大切な行動です。
完璧主義を手放す
すべてを完璧にこなそうとして、疲れきってしまう。
その責任感はすばらしいものですが、一年目から満点を狙う必要はありません。
今日はここまでできれば十分、と合格ラインを下げてみてください。
完璧をめざすより、確実に一つずつ終わらせることのほうが、結果として信頼につながります。100点ではなく、まずは合格点を目標にしましょう。
小さな「できた」に目を向ける
できなかったことばかり数えて、一日を終えていませんか。
できて当たり前と思うと、自分の成長が見えなくなってしまいます。
昨日より一つでも前に進めたなら、それは立派な成功体験です。
「今日できたこと」を一つ書き出す習慣が、自信を少しずつ育てます。小さな一歩の積み重ねが、一年後のあなたをつくります。
それでも限界なら|辞める前に確認したいこと
工夫を重ねても、どうしてもつらいときがあります。
つぶれてしまう前に、確認しておきたいことを整理します。


心と体の不調サインをチェック
がんばりすぎると、心と体は静かにサインを出します。
そのサインに気づけるのは、他でもないあなた自身です。
下のような状態が続くときは、早めに休むことを考えてください。
| サインの種類 | こんな状態が続く |
| 眠り | 眠れない、朝起きられない |
|---|---|
| 食欲 | 食べられない、または食べすぎる |
| 気持ち | 何をしても楽しめない |
| 体 | 出勤前に体調をくずす |
これらは心の疲れのサインとされ、まもろうよ こころ(厚生労働省)でも早めのセルフチェックがすすめられています。
1日で辞めない、でも我慢しすぎない判断フロー
「もう辞めたい」と思った勢いだけで決めると、後悔しやすいものです。
次の順番で考えると、落ち着いて判断しやすくなります。
辞める前に踏む3ステップ
有給や連休で、いったん仕事から離れて回復をはかります。
休んで回復するか、戻らないかで、つらさの種類を確かめます。
異動や転職など、今の職場以外の道も知ったうえで判断します。
相談できる窓口・人を持つ
つらさを一人で抱えると、視野がどんどん狭くなります。
だれかに話すだけで、気持ちが少し軽くなることもあります。
身近に話せる人がいないときは、外部の相談窓口を頼ってください。
厚生労働省の「こころの耳」では、働く人のメンタルヘルスについて無料で相談できます。
働く人の「こころの耳電話相談」:0120-565-455(平日17〜22時/土日10〜16時。祝日・年末年始を除く)。くわしくはこころの耳(厚生労働省)をご確認ください。
残業や休日など労働条件の悩みは、労働条件相談ほっとライン(厚生労働省)でも無料で相談できます。
環境を変えるという選択肢|第二新卒・派遣という道
今の職場がつらいなら、場所を変えるのも立派な選択肢です。
それぞれの道を、順番に見ていきましょう。


新卒1年目でも転職事例は多い
「1年もたずに辞めたら、経歴に傷がつくのでは」と不安になる。
その心配で、動けなくなっている人は少なくありません。
けれど薬剤師は専門職で、1年目の転職もめずらしくないとされ、若い世代の離職・転職の状況も公表されています。
大切なのは、辞めること自体より、次にどんな環境を選ぶかです。
1年目の転職は、キャリアの終わりではありません。合わない環境から早めに動くほうが、傷が浅くすむこともあります。
第二新卒枠で動くメリット
経験が浅いことを、弱みだと思いこんでいませんか。
じつは、若さと柔軟さは、採用する側にとって魅力になります。
これから育てたいと考える職場では、第二新卒は歓迎されやすい存在です。
くわしくは、薬剤師の第二新卒転職の進め方の記事で解説しています。
- 基本的な社会人マナーが身についている
- 前の職場の色に染まりきっていない
- これからの成長に期待してもらいやすい
派遣・転職エージェントの活用
いきなり転職を決めるのがこわいなら、まず情報だけ集める方法があります。
一人で求人を探すより、専門のエージェントに聞くほうが実態をつかみやすいものです。
働き方をゆるめたいなら、正社員だけでなく派遣という選択肢もあります。
転職の全体像は、新卒薬剤師の転職ガイドもあわせて参考にしてください。
| 働き方 | 向いている人 |
| 正社員で転職 | 安定して長く働きたい |
|---|---|
| 派遣で働く | 時間や場所をゆるめたい |
| まず相談だけ | 情報を集めてから決めたい |
\ 時間や場所を自分で選びたい方へ /
\ まずは求人情報だけ集めたい方へ /
よくある質問(FAQ)
薬剤師一年目のつらさについて、よく寄せられる質問に答えます。
薬剤師一年目がつらいのは、いつまで続きますか?
つらさには波があり、半年前後で理想とのギャップを感じやすいとされます。慣れとともに和らぐことが多いので、時期別の特徴で今の自分の位置を確かめてみてください。
一年目で辞めたいと思うのは甘えですか?
辞めるか続けるか悩むのは、自分の人生に真剣に向き合っている証です。甘えかどうかで悩むより、「甘え?」への答えを読んで、気持ちを整理してみてください。
続けるべきか辞めるべきか、どう判断すればいいですか?
まず休んで、成長痛か環境の問題かを見分けるのがおすすめです。判断の手順は辞める前に確認したいことでくわしく解説しています。
仕事のミスがこわくてたまりません。どうすればいいですか?
気合ではなく、間違えやすい薬をメモにまとめるなど仕組みで防ぐのが有効です。具体的な工夫はミスへの恐怖のパートを参考にしてください。
1年目で転職すると不利になりませんか?
薬剤師は専門職で、1年目の転職もめずらしくないとされています。第二新卒として動く方法は環境を変える選択肢にまとめています。
まとめ|薬剤師一年目のつらさは越えられる
薬剤師一年目のつらさは、性格や能力ではなく、経験不足からくる一時的なものが多いものです。
まずは自分の壁がどれかを知り、メモや質問の工夫で少しずつ乗り越えていきましょう。
それでも限界を感じるときは、我慢し続ける必要はありません。
成長痛か環境の問題かを見分け、休む・相談する・環境を変えるという道も覚えておいてください。
今つらいあなたが、少しでも楽な気持ちで明日を迎えられますように。









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